開けたのは、俺じゃなかった——ッ! カヤックに魚探を付けた日【艤装・実装編】

点いた。だが、水深はまだ映らない

ざわ……ざわ……

前回、俺はこう書いて終わった。

「……震えずに、やれるだろうか。」

買ったばかりの、無傷の相棒に穴を開ける。その前夜の話だった。

結論から書く。

震える必要は、なかった。

俺は、開けていないからだ。

ドリルを握ったのは、先輩だった

ざわ……ざわ……

作業は先輩と二人でやった。そして——穴は、先輩が開けた。

俺は横で見ていた。

……情けない、と思うか。

俺も一瞬思った。あれだけ調べて、測って、記事まで書いておいて、肝心のドリルは握らないのかと。

だが、こうも思った。

穴は、一度しか開けられない。

失敗しても埋め戻せない。ズレても戻せない。そういうものを、生まれて初めての一発目に、素人が握る必要があるか。

無い。

経験者の手が、一番安い保険だ——ッ!

そして、前回の準備は無駄にならなかった。コネクタの太さを測り、グランドの径を決め、部材を全部揃えておいたから、当日は迷いがゼロだった。

素人の仕事は、穴を開けることじゃない。開ける前に、全部決めておくことだった。

そして——船体には、一つも穴を開けていない

ざわ……ざわ……

ここは、はっきり書いておきたい。

穴を開けたのは、コンソールだ。船体じゃない。

忍Proはセンターコンソールが取り外せる。魚探の台も、ケーブルの通り道も、全部この箱の上で完結する。船体は、無傷のままだ。

……艇を選んだとき、俺は「コンソールが外れる」ことを選定理由の一つに挙げていた。あのときは「車への積み込みが楽になる」くらいの意味で書いていた。

今日、別の意味で効いた。

穴を開けるのが箱の側なら、やり直しが利く。気に入らなければコンソールだけ替えればいい。船体に穴を開けたら、その艇は一生その穴と付き合う。

選ぶときには分かっていなかった価値が、半年経って出てきた。

できあがった中身——タッパーの、二段重ね

ざわ……ざわ……

今回いちばん気に入っているのは、ここだ。

コンソールの中で、タッパーを二段に重ねた。

  • 上の段:モバイルバッテリー
  • 下の段振動子と、その余ったケーブル(※このタッパーは底を抜いてある。後述)

蓋にケーブルグランドを通し、面ファスナーで固定してある。

これが効いた。

船内が、驚くほどスッキリした。

上がバッテリー、下は振動子と余ったケーブル

配線がのたうち回っていない。バッテリーが転がらない。どこに何があるか、蓋を開けなくても分かる。

そして、もうひとつ。

ケーブルの長さを、わざと調整した。

充電するとき、タッパーごと引き出せる長さにしてある。

これが無いと、毎回コンソールの奥に手を突っ込んでバッテリーを引きずり出すことになる。釣行のたびに発生する作業を、最初に潰しておいた。

防水も、いまのところは隙が見当たらない。……ただし、まだ一度も水に浮かべていない。「完璧だ」と言えるのは、海から帰ってきた後だ。

シリコンの話——前回と、食い違って見えるところ

ざわ……ざわ……

ここは、正直に書いておかないといけない。

前回、俺はこう書いた。

「シリコンは、効かなかった」

ポリエチレンには接着剤が食いつかない。乾いた後にペリッと剥がれる。だから穴の防水を「最後にシリコンで埋める」で済ませるのは間違いだ、と。

……ところが当日、シリコンは三箇所で使われた。

  • 振動子の固定(インハル)
  • タッパーの縁——底に窓を開けて残した「のりしろ」を、コンソールにシリコンで留めてある
  • 貫通部——グランドを通すために開けた穴の周りを、シリコンで養生

先輩は「シリコンでくっつく」と言った。

……調べた結論と、経験者の手が、食い違った。

では、俺が調べたことは間違いだったのか。

そこは、まだ分からない。

ただ、一つだけ整理できることがある。

貫通部で、水が入りうる道は二つある。

① ケーブルと、グランドの間 ② グランド本体と、コンソールに開けた穴の間

①は、締め付けで止まる。ケーブルグランドは、それ自体が防水部品だ。ゴムのパッキンをナットで締め上げ、ケーブルを抱き込む。これがグランド本来の仕事で、本来シリコンは要らない。

……ただし、締め付けが効くには条件がある。

グランドには「対応ケーブル径」という範囲がある。細すぎるケーブルは、締めても届かない。パッキンが縮みきったところで、まだ隙間が残る。

準備編「コネクタの太さが、どこにも書いていない」と延々やっていたのは、これを確かめるためだった。

そして実際、ケーブルは細かった。

そこで——自己融着テープを巻いて、太らせた。

ゴム同士が溶けて一体になるテープで、接着剤ではない。だから相手がポリエチレンかどうかは関係ない。ケーブルの側を、グランドの適合範囲まで育ててやる。

グランドは全部で4個使っている。内訳はこうだ。

場所 通すもの
コンソール ① 振動子のケーブル
コンソール ② 電源のケーブル
上段タッパー 電源のケーブル(バッテリーへ)
下段タッパー 振動子のケーブル

その4個すべての中で、テープを巻いている。

細いケーブルを、グランドが噛める太さまで育てる

測っていなければ、この工程は存在しなかった。細いまま突っ込んで、締めて、「よし」で終わっていたはずだ。そして海の上で、じわじわ入ってきた。

②は、締め付けでは止まらない。だからここに、シリコンを回して養生してある。

……そして、②こそが、前回「効かない」と書いた組み合わせだ。シリコンと、ポリエチレン。

振動子のシリコンは、そもそも役割が違う。

ここで、先輩がひとつ細工をした。

下段のタッパーは、底に窓を開けてある。

全部抜いたわけじゃない。振動子が収まる分だけ、底を四角く切り抜いてある。

こうすると、二つが同時に成立する。

  • 振動子は、その窓からコンソールの底に直接触れる
  • 残った底の縁は、シリコンでコンソールに留める"のりしろ"になる

だから振動子は、タッパー越しではなく——コンソールの底に、直接シリコンで密着している。

これが効く。音が通る層は、コンソールの底、一枚だけになる(インハルという)。

このとき一番の敵は——空気だ。振動子と底の間に空気の層が挟まれば音が通らず、何も映らない。もし底を抜かずに乗せていたら、プラスチックがもう一枚と、その間の空気が挟まっていた。それだけで、この魚探は何も映さない置物になる。

シリコンは、その隙間を埋めて空気を追い出すための詰め物だ。接着剤として使っているわけじゃない。

そして、前回書いた硬質スポンジが、ここで効いた。振動子の形に切り抜いて型枠にしてある。シリコンが横に逃げず、振動子の下に溜まる。位置もズレない。

スポンジが型枠、白いのがシリコン。振動子はコンソールの底に密着している

⚠️ そういうわけで、見ていくべき場所は二つに絞れた。

穴の周りの養生と、タッパーの縁(コンソールに留めてある、あの「のりしろ」)。どちらも、シリコンがポリエチレンに接している場所だ。

剥がれるとすれば、ここから。

答えは、使えば出る。剥がれたら、そう書く。

電源が、入った

ざわ……ざわ……

配線をつなぎ、スイッチを入れた。

——点いた。

画面にメニューが並んだ。魚探の絵が出た。買ってから、ずっと箱の中で眠っていた機械が、俺の艇の上で動いている。

ここまで来るのに、何ヶ月かかったか。

……だが。

水深は、映っていない。

当たり前だ。部屋の中だからだ。振動子は水がないと働かない。今回できたのは、電源が入ることの確認まで。

魚探が本当に仕事をするかどうかは、まだ何も分かっていない。

映るのか。深さが出るのか。魚が映るのか。その答え合わせは、海の上でしかできない。

揃った

ざわ……ざわ……

数えてみる。

艇がある。台がある。カバーがある。パドルがある。シートがある。そして、魚探がある。

穴も、開いた。

……もう、足りないものが、思いつかない。

次は、海だ。

使ったもの、全部

ざわ……ざわ……

準備編で「部材の一覧は実装編に置く」と書いた。その約束を果たす。

■ 艤装に使った部材

部材 金額
ケーブルグランド M20(普通タイプ・5個入/使ったのは4個) 855円
ステンレスボルト+ナット M4×20(十字穴付き六角・セット品) 225円
丸座金(M4用) 178円
硬質スポンジ(振動子の型枠用) 602円
タッパー(1.3L)× 2個 1,754円
面ファスナー(プラスチック製)× 2 764円
シリコンシーラント ※レシート無し(相場400〜800円)
自己融着テープ ※レシート無し(相場400〜800円)
合計 およそ5,200〜6,000円

⚠️工具代は、この中に入っていない。穴あけのドリルもヤスリも、先輩の道具を借りた。一人でやるなら、ここに工具代が乗る。

■ 寸法(真似する人へ、ここが本体)

項目 数値
グランド M20 × 4(コンソール2+タッパー各1)
コンソール等の穴 M20のグランドに合う径(※下記)
魚探ベースの固定 M4×20 貫通ボルト × 3本裏側に丸座金
振動子 コンソールの底に直接インハル(硬質スポンジで型枠+シリコン。タッパーは底を抜いて枠として被せる

⚠️穴の径について、正直に書いておく。

準備編では「M20なら穴は20.5mm」と書いた。グランドの取付穴径がそれだからだ。

だが、実際に何mmのドリルが当たったのかを、俺は見ていない。

穴を開けたのは先輩で、俺は横にいた。だから「20.5mmで開けた」と断言はしない。

自分で開けなかった代償が、こういうところに出る。

真似する人は、自分が買うグランドのパッケージに書いてある「取付穴○mm」に従ってください。そこが正解で、俺の記憶は正解じゃない。

💡面ファスナーは「プラスチック製」と書いてあるものを選んだ。布のものは海水を吸ってそれ自体が傷んでいくからだ。

ここは値段ではなく、パッケージの素材表示を読むかどうかの差だ。海の上に置く道具は、その一行で寿命が変わる。

■ 買ったのに、使わなかったもの

ナイロンナット。

緩み止めのために買った。準備編で「海の上は常時振動する。緩み止めは省かない」とまで書いた。

……使えなかった。

理由は、ボルトが長すぎたこと。ナイロンナットはボルトの先を突き抜けさせられない構造で(袋ナットではないのだが)、締め切る前に、中で先端が突き当たってしまった。

結局、ボルトに付属してきた普通のナットで締めてある。

つまり今、俺の魚探の台には、緩み止めが入っていない。

初出艇のあと、増し締めを確認する。ここに書いておけば、忘れない。

■ 電源と本体(別記事で既出)

——魚探を艇に載せるための"工事費"は、6千円弱だった。

本体より、ずっと安い。だが、この5千円を間違えると、本体が海水に浸かる。


⚠️ 真似する人へ:この記事は「俺と先輩がこうやった」という記録で、手順書ではありません。穴あけは一度しか失敗できない作業です。可能なら、一度は経験者と一緒にやることを勧めます。部材の選び方と測り方は準備編にまとめてあります。

そして、詳しい人へ:振動子のインハル固定、シリコンで長く保ちますか。剥がれた経験がある方がいたら、コメントで教えてください。ここは俺がまだ答えを持っていない部分です。

次回予告:初出艇——ついに、海に出る